フジヤマ・六合目〜本七合目
六合目で雨対策をし直して、出発する頃には雨も本格的に降ってきていまして、雷もゴロゴロ鳴っていました。この雨の中、歩を進めるのはなかなかしんどいです。
雨が降りすぎて、登山道の真ん中に川ができてきました。その川はどんどんと勢いを増し、土石流みたいなのが上から流れてきます。こんなに流れてきたら下の方に土砂が溜まってしまうなって思うのですが、どんどん流れてきます。
そのうちピカッと近くで雷が光って、大きな音が鳴りました。ああ、これは怖いし危ない、本六合目に行ったら下山するかよく考え直そうと、本気で心が折れた瞬間でした。雷を避けるには、高いもののそばに行かないこと、トレッキングポールを手から離すこと、ぐらいしか思いつきません。しばらく体勢を低くして、雷が遠くへ行くのを待ちます。
それでも頑張ってゆっくり登ってしばらくすると、雨も止みました。厚い雲が去り、青空が見えてきます。この瞬間に雨のストレスから解放されます。
雨が止むとムシムシするのですが、少しずつ登るしか道はありません。晴れては雨を繰り返していたのですが、晴れた瞬間、自分たちが上ってきた道を見返すと、そこに虹が見えました。虹なんてたまにしか見れないし、見れてもいつも見上げるばかりなので、自分より下にかかる虹は不思議な光景です。
雨でずぶ濡れになりながらも本六合目に到着。六合目から約60分歩きました。たくさん人が休んでいました。僕たちも荷物を下ろし、ベンチで少し休憩。家から持ってきたゼリー飲料を飲むことにします。これ、食欲無くてもエネルギー補給できる優れものですが、重いのがネック。1つ200グラム前後あるので、一つ片付けると少し荷物が軽くなります。引き返すかどうかここで考えたのですが、ここまでの道のりが遠すぎて、引き返すのも大変そうだし、本七合目まで行って一泊してから引き返すか考え直すことにしました。登山続行です。
休憩が終わり、次は七合目を目指して登りはじめます。しかし、この頃僕の体調に異変が出始めました。右足の付け根か股関節かなんかその辺が痛くなってきました。今までこんな所痛くなったこと無かったのですが、右足を持ち上げる度に痛いのです。だからといって救助を呼ぶほどでもないので、痛みを我慢しながら歩を進めます。
霧が晴れる瞬間だけ下界を臨めます。一瞬の晴れ間に感激しながら雨に打たれて頑張るのです。
標高も3000メートル近くなると、僕が撮りたかった雲の上の風景を見ることができます。写真は光を撮るものだってよく言うけど、太陽光と雲の作るグラデーションは本当に不思議できれいです。雲の写真はいっぱい撮ってて、大きな画面で見るとなかなか圧巻ですよ。
いよいよ七合目に到着です。標高3090メートル。とうとう3000メートルを突破しました。ここまで来ると、やはり空気が薄いのを感じられます。ここで有酸素運動は絶対したくないです。本六合目からは時間で80分ぐらい歩いたでしょうか。
七合目の大陽館はトイレがきれいでした。そういえば富士山のトイレはどこも有料です。ここも200円取られます。富士山に行くときは小銭を多めに用意していきましょう。まあ僕は沢山用意しすぎて重くなってしまいましたが。
次が本七合目です。何で六合目や七合目が二つあるんですかね。とにかくその本七合目にある見晴館が予約を取った山小屋です。
しかし、この七合目から本七合目の道のりが一番きつかったです。先ほどから痛かった右足が本格的に痛くなってしまって、右足が持ち上がらない。右足は引きずって歩くような形になってしまいました。また空気が薄く、登山道はジグザグに登るのですが、端まで行っては休憩をするようになってしまいました。こんなにも足が前に出ないので、ものすごいスローペースなのですが、結構周りもそんな感じで登っています。
午後5時過ぎに本七合目に到着。標高3200メートル。七合目からは110メートルしか上がってないのにとてもつらい道のりでした。時間はたしか90分ぐらいかかってしまったかな。
ここで予約した山小屋の見晴館にチェックインしました。当初の予定では、ここで一泊して早朝に日の出を見て、朝6時ぐらいに頂上目指して出発です。しかし、あまりにも足が痛いのと疲れてしまって、予定通りできるか見当もつかないし、疲れすぎて残念ながら次の日まで写真を撮ってませんでした。夜景とか月とかきれいに撮れるか考えてたのですが…。
なぜ本七合目の見晴館を選んだのかというと、二日目のご来光を拝んでから登頂する予定だったので、できるだけ上の方で泊まりたかったのですが、あまり高いと高山病が怖いし、八合目は吉田口からの登山者達と合流するので混雑すると思われたため、自然とその直前の本七合目の山小屋になりました。この見晴館の評判も悪くありませんでした。
山小屋に入ると濡れた荷物を拭き取って簡単な説明を受け、とにかく食事のテーブルにつかされます。沢山の登山者を捌くのに必死なようで、ホテルや民宿並みのサービスを期待してはいけません。宿泊者はトイレは使いたい放題ですが、きれいではありませんでした。夕飯はカレーが出て、お新香がつくのですが、味は悪くありませんでした。
荷物が湿ってしまって気持ち悪いのですが、整理する暇もなくとにかく夕飯を食べ、寝床を案内されます。布団は二人で一組、二段ベッドが二列あり、1列15人ぐらい突っ込まれるので全部で60人ぐらいでしょうか。いわゆる雑魚寝という感じです。湿っている荷物をザックから取り出し、朝までに乾くことを祈ります。トイレに行ったり夕方の風景を見たり、山小屋の主人と奥さんが福神漬けのことで喧嘩してるのを見たりしているうちに午後7時過ぎには消灯です。テレビもないし問答無用です。
疲れているのでとにかく横になるのですが、周りからはいびきは聞こえるしコソコソ話し声は聞こえるし、豪雨や雷の音で不安になるし、布団は暑いし消灯は早いしで眠れる要素がありません。横になったら頭痛もしてきました。まあ山小屋なんてこんなもんだと諦めて目を閉じました。頂上でご来光を見るために夜中に出発する人が多く、ゴソゴソする音が全部聞こえます。寝不足なはずなのに殆ど一睡もできませんでした。
目を閉じながら、足はズキズキするし、頭も痛いし、明日どうしようかとばかり考えていました。